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この記事でわかること
- 要介護認定を受けただけでは障害者控除の対象にならない理由
- 同じ要介護3でも、市区町村によって控除額が13万円変わること
- 障害者控除対象者認定書の申請手順と、過去の年分をさかのぼる方法
この記事は、両親の介護と見送りを経験した水野そらが、国税庁と自治体の一次情報をもとに編集しました。
まず結論
要介護認定を受けただけでは、障害者控除の対象にはなりません。ただし、お住まいの市区町村から「障害者控除対象者認定書」の交付を受ければ、障害者手帳がなくても障害者控除を使えます。控除額は所得税で27万円または40万円(同居特別障害者は75万円)です。要介護4・5を特別障害者(所得税40万円)としている自治体がある一方、介護度では区分せず認知症高齢者の日常生活自立度などの状態で判定する自治体もあり、全国共通の決まりはありません。判定の基準は自治体ごとに違うため、まずは市区町村の介護保険の窓口に確認してください。
親の介護をしていると、「要介護認定でも税金が軽くなる制度がある」と聞いて戸惑う方は多いのではないでしょうか。私も母の介護をしていたころ、市の広報でこの制度を知り、あわてて調べた記憶があります。この控除は自分から申請しないと使えず、対象の線引きも市区町村ごとに違います。この記事では条件・控除額・申請の流れを整理します。
要介護認定を受けただけで障害者控除は受けられる?
受けられません。要介護認定と障害者控除は、目的の異なる別の制度だからです。
国税庁のタックスアンサーNo.1185には、「介護保険法の要介護認定を受けられただけでは障害者控除の対象とはなりません」と明記されています(所得税法第2条、所得税法施行令第10条)。要介護認定は介護サービスを使うための認定で、税の制度とは切り離されているためです。
一方で同じNo.1185には、市町村長等から「知的障害者・身体障害者に準ずる」と認定を受けた人は対象になる、とも書かれています。この認定を書面にしたものが障害者控除対象者認定書です。
- 障害者手帳は不要。市区町村が交付する認定書が手帳の代わりになる
- 申請しないと交付されない。要介護認定を受けても自動では届かない
- 発行手数料の有無は自治体によって案内が異なる(窓口で確認)
まだ要介護認定を受けていない場合は、要介護認定の申請方法|7段階の区分と30日で認定される流れから確認してください。認定書は要介護認定の資料をもとに判定されるので、順番としては要介護認定が先です。
同じ要介護3でも「障害者」と「特別障害者」に分かれる

認定の基準は各市区町村が独自に定めています。そのため同じ要介護3でも、住んでいる市区町村によって「障害者」にも「特別障害者」にもなり得ます。
実際に、2つの自治体が公表している基準を並べます。
| 要介護度 | 草加市の例 | 江東区の例 |
|---|---|---|
| 要介護1〜3 | 一律で障害者 | 認知症高齢者の日常生活自立度がⅢa(3のa)以上、または寝たきり度ランクB・Cなら特別障害者、認知症自立度Ⅱa・Ⅱbなら障害者 |
| 要介護4・5 | 特別障害者 | 特別障害者 |
ここが分かれ目です。同じ要介護3でも、草加市の基準なら「障害者」で所得税の控除額は27万円、江東区の基準で自立度Ⅲa以上と判定されれば「特別障害者」で40万円。控除額で13万円の差が生まれます。
つまり「要介護3以上なら特別障害者」という全国共通の線引きは存在しません。介護度を使わず、認知症高齢者の日常生活自立度や障害高齢者の日常生活自立度(いわゆる寝たきり度)だけで判定する自治体もあります。
※2026年8月時点で各自治体が公表している基準の一例です。基準は見直されるため、最新の内容は公式サイトでご確認ください。
障害者控除でいくら安くなる?控除額の一覧
控除額は法律で決まっており、全国どこでも同じです。区分によって次の3段階に分かれます。
| 区分 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 |
|---|---|---|
| 障害者 | 27万円 | 26万円 |
| 特別障害者 | 40万円 | 30万円 |
| 同居特別障害者 | 75万円 | 53万円 |
「同居特別障害者」は、扶養している特別障害者と同居している場合の区分です(所得税の控除額は国税庁タックスアンサーNo.1160、住民税の控除額は新宿区の案内による)。
気をつけたいのは、この金額がそのまま戻るわけではない点です。控除額は所得から差し引く金額で、実際に軽くなる税額は所得や税率で変わります。ご自身のケースは税務署または税理士にご確認ください。
なお、本人が障害者に該当し、前年の合計所得金額が135万円以下の場合は住民税が非課税になります(地方税法)。年金収入が中心の親なら、ここも併せて確認しておくとよいでしょう。
税の控除以外に、支払った介護費用そのものを軽くする制度もあります。介護費用を安くする4つの制度|高額介護サービス費・負担限度額認定の申請方法も見ておくと取りこぼしが減ります。
障害者控除対象者認定書はどこに申請する?
申請先は、お住まいの市区町村の介護保険担当課(高齢者福祉課など)です。税務署ではありません。
- 市区町村の介護保険担当課に申請書を請求する。窓口・公式サイトのダウンロード・郵送のいずれかで入手できます
- 対象者の氏名・住所・介護保険の被保険者番号などを申請書に記入する
- 窓口または郵送で提出する。同居の家族が代理で申請できるとしている自治体もあります
- 市区町村が要介護認定の資料(主治医意見書・認定調査票など)をもとに区分を判定する
- 後日、障害者控除対象者認定書が郵送などで交付される
判定の基準日は、多くの自治体でその年の12月31日時点の状態とされています。亡くなった年は、死亡日を基準日として判定する自治体が多く見られます。
母の介護をしていたころ、この制度を市役所に電話で聞いたら「税金のことは税務署へ」と案内され、税務署では「認定書は市役所へ」と言われて、どちらに聞けばよいのか分からなくなったことがあります。認定書を出すのは市区町村、税の相談先は税務署。役割が分かれていると知ってからは迷わなくなりました。※個人の体験に基づく一例です。窓口の対応は自治体・時期によって異なります。
同じ「申請すればお金が戻る」タイプの制度に、おむつ代の助成もあります。要介護認定でおむつ代の助成は受けられる?調べ方と申請手順で医療費控除との使い分けを確認できます。
年末調整と確定申告のどちらで使う?過去の年分はさかのぼれる?
会社員なら年末調整、自営業や年金受給者なら確定申告で使います。ただし年末調整に間に合うかどうかは自治体によって正反対なので、ここは先に確認してください。
基準日が12月31日であることを理由に「申請は翌年1月以降。年末調整には使用できません」と明記している自治体(東京都北区・江東区)がある一方、「年末調整や確定申告をするときに認定書を添付してください」としている自治体(山形県河北町)もあります(2026年8月時点)。勤務先の年末調整に使うつもりなら、まず窓口に「今年の年末調整に使えるか」を聞いてください。
- 年末調整…勤務先に提出する扶養控除等申告書の障害者の欄に記入します。認定書のコピーの提出を求められることがあります
- 確定申告…確定申告書の障害者控除の欄に記入します。年末調整で書き忘れた場合も、確定申告で控除を受けられます
- 過去の年分…年末調整だけで確定申告をしていない場合は、その年分の確定申告(還付申告)を翌年1月1日から5年間提出できます(国税庁タックスアンサーNo.2030)。すでに確定申告書を提出している場合は、更正の請求が原則として法定申告期限から5年以内とされています(同No.2026)
ただし、認定書を過去の年分にさかのぼって交付してもらえるかは自治体ごとの取り扱いです。5年分まで発行する自治体がある一方、当時の資料が残っていないと発行できない場合もあります。何年分さかのぼれるかは窓口で、どちらの申告手続きになるかは税務署に確認してください。
役所に聞くときの4つの質問

電話1本で確認できます。介護保険被保険者証(被保険者番号と要介護度が書いてあります)を手元に、次の4点をそのまま聞いてみてください。
- 「うちの市区町村では、要介護◯は障害者と特別障害者のどちらに当たりますか。介護度以外に見る項目はありますか」
- 「◯年分の認定書も出してもらえますか。何年前までさかのぼれますか」
- 「申請から交付まで何日かかりますか。郵送や家族の代理申請はできますか」
- 「今から申請して、今年の年末調整に使えますか。申請はいつから受け付けますか」
1つ目がいちばん大事です。他の自治体の情報を見て「うちは対象外だ」と決めるのはもったいないことです。
亡くなった年や相続税はどうなる?
亡くなった年の手続きは、準確定申告で行います。
準確定申告は、亡くなった方のその年の所得を相続人が申告するもので、期限は原則として相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。流れは準確定申告とは?4ヶ月の期限とやり方にまとめています。
なお、相続税にも障害者控除という制度がありますが(国税庁タックスアンサーNo.4167)、これは所得税・住民税の障害者控除とは別の制度です。相続税については税務署または税理士にご確認ください。
控除で負担が軽くなっても、日々の介護の手そのものは戻りません。介護保険のサービスだけでは通院の付き添いや家事まで手が回らない、という声もよく聞きます。介護保険の枠にとらわれない訪問介護・家事代行を探せるサービスもあり、内容と料金の目安は公式サイトで確認できます。
よくある質問
Q. 要介護4なら必ず特別障害者になりますか?
A. 全国共通の決まりはありません。要介護4・5を特別障害者としている自治体がある一方、介護度では判定せず状態で見る自治体もあります。窓口でご確認ください。
Q. 障害者手帳を持っていない親でも申請できますか?
A. できます。障害者控除対象者認定書は手帳のない方のための仕組みで、要介護認定の資料をもとに市区町村が判定するとされています。
Q. 認定書は毎年もらう必要がありますか?
A. その年の12月31日時点の状態で判定するため、年ごとに申請を受け付ける運用の自治体があります。有効期間の扱いも自治体で異なるので確認をおすすめします。
まとめ
- 要介護認定を受けただけでは障害者控除の対象にならない(国税庁No.1185)
- 市区町村の障害者控除対象者認定書があれば、手帳がなくても控除を受けられる
- 同じ要介護3でも自治体の基準で区分が変わり、所得税の控除額が27万円と40万円に分かれる
- 申請先は市区町村の介護保険担当課。年末調整または確定申告で使う
- 過去の年分の扱いは、税は5年以内、認定書の発行可否は自治体ごとの取り扱い
まずはお住まいの市区町村の介護保険窓口に電話して、上の4つの質問を聞いてみてください。それが、この控除を使えるかを確かめるいちばん早い一歩です。

