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この記事でわかること
- 親の認知症を疑う最初のサインと、加齢による物忘れとの見分け方
- 病院に行きたがらない親への実践的な対処法
- 診断後の手続き・お金の備え・施設の選び方
- 介護疲れの本音を責めないための考え方
まず結論
親の認知症に気づいたとき、最初に頼る窓口は状況によって変わります。迷ったら、まず市区町村の地域包括支援センターに電話するのが入口です。
基本の流れは「記録をつける→地域包括支援センターに相談→かかりつけ医を受診」の3ステップです。受診を嫌がる、一人暮らしで心配、介護サービスを使いたい、お金の管理が不安、といった状況ごとの行き先は、後半の早見表で確かめられます。
お金の管理や契約が心配な方は、早見表の「お金」の行のとおり、判断能力があるうちに備える方法があります。家族信託はその一つで、契約を結べるのは本人に判断能力があるうちです。すでに判断能力が下がっている場合は、成年後見制度を検討することになります。
「最近、同じ話を何度もするようになった」「財布をどこに置いたか分からなくなることが増えた」——そんな変化に気づいたとき、頭では「認知症かもしれない」と分かっていても、どう動けばいいか途方に暮れてしまう方が多いです。
私自身、60代の母が同じことを繰り返し話すようになったとき、何から始めればいいのか全然分かりませんでした。この記事では、親の認知症を疑い始めた家族が「何をどの順番でやればいいか」を、実際の経験をふまえながら整理してお伝えします。
「あれ、おかしいな」——親の認知症、最初のサインはこう現れる
見逃しやすい初期症状チェックリスト
認知症の初期は、本人もご家族も「年のせいかな」と見過ごしてしまいがちです。以下のサインが続く、または増えてきたときは、地域包括支援センターやかかりつけ医に早めに伝えておくと、受診の目安がつきやすくなります。
- 同じ話や同じ質問を短時間に何度も繰り返す
- 今日の日付や曜日が分からなくなった
- 慣れているはずの料理の手順が分からなくなった
- お金の管理(支払い・おつりの計算)が難しくなった
- 身だしなみに無頓着になった、季節に合わない服を着る
- 以前は好きだったことに興味を示さなくなった
- 道順が分からなくなり、慣れた場所で迷う
「加齢の物忘れ」と「認知症の物忘れ」はここが違う
年齢を重ねると誰でも物忘れは増えますが、認知症による物忘れとは根本的に異なります。
| 項目 | 加齢による物忘れ | 認知症の物忘れ |
|---|---|---|
| 忘れ方の特徴 | 体験の一部を忘れる(例:昨日の夕食のメニュー) | 体験ごと忘れる(例:昨日の夕食を食べた事実自体) |
| ヒントの効果 | ヒントがあれば思い出せる | ヒントを与えても思い出せない |
| 自覚 | 「最近忘れっぽい」と自覚している | 忘れていること自体に気づかない |
| 日常生活への影響 | 大きな支障はない | 仕事・家事・人間関係に支障が出る |
認知症の4つのタイプを知っておく
厚生労働省によると、最も多いのはアルツハイマー型で全体の約6割を占めるとされています。
- アルツハイマー型:記憶障害から始まり、ゆっくり進行する
- レビー小体型:幻視や体の動きの悪さが特徴的
- 血管性認知症:脳梗塞・脳出血のあとに発症する
- 前頭側頭型:人格変化や行動障害が先に出やすい
タイプの判断は専門医の仕事です。

認知症かも、と思ったら最初にやること3つ
①変化の記録をつけておく
受診するとき、医師は「いつから・どんな変化があったか」を聞いてきます。そのとき記憶だけを頼りにしていると、うまく説明できずに「異常なし」で終わってしまうことがあります。
気になる行動や言動は、日付とともにスマホのメモや手帳に書き留めておきましょう。「何月ごろから同じ話を繰り返すようになった」といった記録が、診断の助けになります。
②地域包括支援センターに相談する
「どこに相談すれば?」と迷ったときの最初の窓口は地域包括支援センターです。自治体ごとに設置されており、介護・医療・生活支援のことを総合的に相談できます。電話一本で、どの医療機関を受診すべきか、どんな制度が使えるかを教えてもらえます。
電話する先は、親が住んでいる地域のセンターです。遠方に住む子でも電話で相談できます。最初の一言は「親の物忘れが増えて心配で、何から始めればいいか相談したい」で足ります。
手元に親の氏名・住所・生年月日と、変化の記録があると話が進みます。相談は無料と案内している自治体が多く(横浜市など)、受付時間はセンターごとに違うため、各センターに確認してください。
市区町村の窓口またはインターネットで「〇〇市 地域包括支援センター」と検索すると見つかります。
③かかりつけ医に相談・受診する
まずはかかりつけのお医者さんに「最近こういうことが気になる」と伝えましょう。専門的な検査が必要と判断されれば、認知症専門の医療機関(物忘れ外来・精神科・神経内科など)に紹介してもらえます。
認知症疾患医療センターを受診する場合も、受診方法は事前に電話で確認しておくと安心です。
状況別の早見:最初に頼る窓口はどこか
3つの順番は基本形です。実際には、親の状況によって最初に動く先が変わります。
| いまの状況 | 最初に頼る先 |
|---|---|
| 本人が受診を嫌がる | 地域包括支援センター。地域によっては、認知症が疑われて医療・介護につながっていない人などの自宅を専門職が訪ねる「認知症初期集中支援チーム」につないでもらえる場合があります |
| 一人暮らしで、火の始末や服薬が心配 | 地域包括支援センター。サービスを使う段階になったら要介護認定の申請へ進みます |
| デイサービスやヘルパーを使いたい | 市区町村の介護保険窓口で要介護認定を申請します(地域包括支援センターで手続きを代行している場合もあります)。くわしくは要介護認定の申請方法へ |
| 診断や専門的な相談先を知りたい | かかりつけ医、または認知症疾患医療センター(専門的な診断や医療相談を行う医療機関。設置状況は地域で異なります) |
| お金の管理・契約が心配 | 下の「お金の凍結」の節へ(家族信託・成年後見など) |
| 家族の負担が限界 | 地域包括支援センターやケアマネジャー。施設を考える場合は「施設という選択肢」の節へ |
支援チームや疾患医療センターの整備状況は地域で違うため、有無は地域包括支援センターに聞くのが確実です。
病院に行きたがらない親をどう連れて行くか
「私はおかしくない」という拒否は珍しくない
認知症の初期に本人が受診を拒否するのは、よく起こることです。「自分は普通だ」という強い思いがあったり、「認知症と診断されるのが怖い」という心理が働いていたりします。頭ごなしに「病院に行かないとダメ」と言っても逆効果になりやすいです。
実際に使えるアプローチ
- 健診・人間ドックの名目で連れて行く:「物忘れの検査」ではなく「年に一度の脳の健康チェック」として誘うと受け入れてもらいやすい
- かかりつけ医に事前相談する:受診前に家族だけで医師に相談し、診察の場でうまく誘導してもらうよう頼む。かかりつけ医ならもともと信頼関係があるため本人も構えにくい
- 「一緒に行こう」という誘い方をする:命令ではなく「一緒に行くだけでいいから」という誘い方にすると抵抗感が減る
- タイミングを選ぶ:本人の状態がよい時間帯(一般的に午前中が落ち着いていることが多い)を選ぶ
それでも難しい場合は、地域包括支援センターや「認知症の人と家族の会」に相談してみてください。同じ悩みを持つ家族からのアドバイスが助けになることがあります。

一人暮らしはいつまで続けられる?「限界」を判断する7つのサイン
一人暮らしに潜むリスクを整理する
認知症の親が一人暮らしをしている場合、遠くにいる家族ほど「大丈夫かな」と不安を抱えています。以下のサインが複数見られるようになったら、生活の見直しを検討する時期です。
- 火の不始末:ガスコンロを消し忘れる、鍋を焦がすことが増えた
- 服薬管理の乱れ:薬を飲み忘れる、または二重に飲んでしまう
- 金銭管理の混乱:請求書の支払いを忘れる、多額の現金を引き出す、詐欺に遭いやすくなる
- 食事・栄養の乱れ:冷蔵庫に同じものが大量にある、体重が急に落ちた
- 徘徊・迷子:外に出たまま帰れなくなった、夜中に外出する
- セルフネグレクト:入浴・着替えを拒否する、部屋が著しく散らかっている
- 近隣トラブル:騒音・ゴミ・異常な行動についての苦情が来るようになった
「まだ何とかなっている」と感じても、複数のサインが重なっているなら早めに地域包括支援センターへ相談し、次のステップの検討を始めてください。
行方が分からなくなったときは、迷わず警察(110番)に相談してください。ガスや火の始末が心配なときは、地域包括支援センターに早めに相談すると、見守りや安全対策の話ができます。
「金銭管理の混乱」が重なってきたら、判断能力があるうちの備えが選択肢になります。注意点として、家族信託が向くかどうかは家庭の状況や財産で違い、契約できるのも本人に判断能力があるうちだけです。すでに判断能力が下がっている場合は、成年後見制度を検討することになります。
下の案内先の公式ページで、家族信託の相談の流れや費用を確かめてから、相談するかどうかを決められます。
診断されたら進める手続き——介護保険・要介護認定・ケアマネ
まず介護保険の申請を
介護サービスを使うには、介護保険の要介護認定の申請が必要です。市区町村の窓口または地域包括支援センターで手続きができます。申請は診断を待たず、認知症が疑われる段階でもできます。申請はご本人のほか、地域包括支援センターなどに代行してもらえる場合もあります。
認定を受けると、要介護度に応じてデイサービス・訪問介護・施設入居などのサービスを1〜3割の自己負担で利用できるようになります。
介護保険の仕組みについては、介護保険のしくみをわかりやすく解説した記事で詳しく説明しています。
ケアマネジャーを選ぶ
要介護認定が下りたら、ケアマネジャー(介護支援専門員)にケアプランを作成してもらいます。地域包括支援センターや市区町村窓口で居宅介護支援事業所を紹介してもらえます。ケアマネは「親の介護における伴走者」とも言える存在です。相性が合わないと感じたら変更も可能なので、遠慮せず相談してください。
お金の凍結は身体より先に来る——今日からできる備え
認知症になると口座が使えなくなる
あまり知られていませんが、認知症と診断されて判断能力がないと金融機関が判断した場合、銀行口座が凍結されることがあります。本人が施設の費用を払えなくなる、家のリフォーム費用が出せなくなる、といった事態が実際に起きています。
備えるなら、診断の前に判断能力があるうちのほうが選べる方法が多くなります。
主な備えの選択肢
- 任意後見制度:判断能力があるうちに、信頼できる人(家族など)に将来の財産管理を任せる契約を結んでおく制度
- 家族信託:財産を家族に信託し、本人の判断能力が低下しても家族が管理・処分できるようにする仕組み
- 法定後見制度:すでに判断能力が低下している場合に、家庭裁判所が後見人を選任する制度
どの制度が適しているかは個々の状況によって異なります。使える時期や手続きが制度ごとに違うため、司法書士や弁護士など法律の専門家に親の状況を伝えて、自分たちの場合はどうかを確かめてください。
家族信託は、司法書士・弁護士などの専門家に、契約の設計から相談できます。判断能力があるうちに検討したい方は、まず案内先の対応内容を公式ページで確認してください(同じ案内を前半にも載せています)。
「ひどいことを考えてしまう自分」を責めないでください
「早く楽になりたい」は限界のサイン
介護をしている方の多くが、心のどこかで「もう限界」「早く終わってほしい」という気持ちを経験します。そしてその感情を持った自分を、深く責めます。でも、これは人としておかしいことでも、親不孝でもありません。それだけ追い詰められているというサインです。
私も、同じことを何十回も繰り返す母に怒鳴ってしまった夜がありました。後悔と自己嫌悪で眠れなかったことを今でも覚えています。でも後から知ったのですが、それは介護者の多くが経験していることでした。
「一人で全部やらなくていい」という前提を持つ
介護は、一人の家族が全部引き受けるものではありません。プロのサービス(デイサービス・訪問介護・ショートステイ)を使うことは、親を見捨てることではありません。自分が壊れてしまってからでは、親を支えることも難しくなります。
ケアマネジャーや地域包括支援センターに「もう限界です」と伝えることは、立派な一歩です。また、介護者向けの家族会や相談窓口も活用してみてください。
施設という選択肢——後悔しないための考え方と種類
施設に入れることは「逃げ」ではない
「施設に入れるなんてかわいそう」「親不孝だ」という声は、今でも聞こえてきます。でも、プロのスタッフが24時間対応できる施設のほうが、安全に過ごせるケースは少なくありません。
施設への入居は「見捨てること」ではなく、「最善の環境を選ぶこと」です。施設に入った後も面会し、関係を続けることが大切です。
認知症の方が入居できる主な施設
| 施設名 | 特徴 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| グループホーム | 認知症の方専用・少人数・地域密着型 | 月13〜18万円程度 |
| 特別養護老人ホーム(特養) | 要介護3以上・費用が比較的安い・順番待ちが多い | 月6〜15万円程度 |
| 介護付き有料老人ホーム | 24時間介護スタッフ常駐・サービス充実 | 月15〜30万円程度 |
| 住宅型有料老人ホーム | 介護は外部サービスを利用・費用に幅がある | 月10〜25万円程度 |
費用や入居条件は施設によって大きく異なります。老人ホームの種類と費用について詳しく解説した記事も参考にしてください。
認知症が進んできた場合は、認知症専門のグループホームも有力な選択肢です。少人数でアットホームな環境が、本人の安心感につながることもあります。
施設探しは情報量が多く、一人で調べるのは大変です。施設紹介サービスを使うのも、負担を減らしやすい方法のひとつです。いい介護では、入居相談員への相談を無料で受け付けています(詳しい条件は公式ページで確認してください)。
介護保険の申請方法は要介護認定の申請方法、在宅介護サービスの使い方は在宅介護サービスの種類と使い方もあわせてご覧ください。
まとめ:親の認知症は「早く・チームで」動くのが正解
親に認知症の兆候を感じたとき、「まだ様子を見よう」と後回しにしてしまうのは自然な心理です。でも、早く動くほど本人も家族も選択肢が広がります。
- 変化に気づいたら、まず記録をつける
- 地域包括支援センターに相談し、かかりつけ医を受診
- 診断後は介護保険・ケアマネ・資産対策を早めに進める
- つらくなったら「限界のサイン」として助けを求める
- 施設という選択肢は「逃げ」ではなく「最善の環境選び」
どんなに準備しても、思い通りにいかないことはたくさんあります。完璧な介護より、長く続けられる介護を。一人で背負わずに、プロと地域の力を借りながら進んでいきましょう。
個々のケースによって最適な対応は異なります。具体的な判断は、かかりつけ医・ケアマネジャー・地域包括支援センターなどの専門家にご相談ください。
親に判断能力があるうちに備えたい方は、下の案内先で家族信託の相談内容を確かめてください。
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