死亡後の銀行口座はいつ凍結される?解除手続きと仮払い制度をやさしく解説

銀行口座はいつ凍結される 相続手続き 相続・手続き

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この記事でわかること

  • 銀行口座はいつ、どんなきっかけで凍結されるのか
  • 凍結前に勝手にお金を引き出してはいけない理由
  • 葬儀費用が心配なときに使える「預貯金の仮払い制度」の計算方法
  • 凍結解除の手続きの流れと必要書類

まず結論

銀行口座は、死亡届を提出した瞬間に自動で凍結されるわけではなく、原則として銀行が「口座名義人が亡くなった」という事実を知った時点で凍結されます。葬儀費用などまとまったお金がすぐに必要な場合は、2019年7月から始まった「預貯金の仮払い制度」を使えば、遺産分割が終わる前でも一定額を引き出せる場合があります。凍結後の正式な引き出しには、遺言書や遺産分割協議書の有無に応じた書類がそれぞれ必要になり、手続き完了まで2週間〜1ヶ月程度を見ておくと安心です。

親が亡くなった直後は、悲しみに向き合う間もなく、役所への届け出や葬儀の準備に追われるものです。私自身も自分の親の終活・相続に関わった経験の中で、「口座がいつ止まるのか分からず、葬儀費用の支払いに間に合うか不安だった」という声を、終活について情報発信をする中でたびたび耳にしてきました。この記事では、銀行口座が凍結される仕組みと、凍結前後にやってはいけないこと、そして葬儀費用の資金繰りに役立つ仮払い制度について、時系列に沿って整理します。

銀行口座はいつ・なぜ凍結される?

「死亡届を出したら口座がすぐ止まる」と思われがちですが、これは正確ではありません。仕組みを知っておくと、必要以上に慌てずに済みます。

死亡届では凍結されない

死亡届は市区町村役場に提出するものであり、役所から金融機関へ自動的に死亡情報が伝わる仕組みには原則としてなっていません。そのため、死亡届の提出そのものが口座凍結の直接のきっかけになるわけではないとされています。凍結は、あくまで銀行側が名義人の死亡を「知った」タイミングで行われます。

銀行が死亡を知るきっかけ

銀行が死亡の事実を知るきっかけとしては、次のようなケースが多いといわれています。

  • 相続人(家族)が窓口や電話で死亡の事実を伝え、相続手続きについて相談する
  • 新聞のお悔やみ欄や、地域の知り合い経由で情報が伝わる
  • 取引のある担当者・支店長などが個人的に把握する

つまり、家族が何も連絡しなければ、しばらく凍結されないまま残ることもあり得ます。ただし、後述するように凍結前に安易に引き出すことにはリスクが伴うため、注意が必要です。死亡後の手続き全体の流れは、死亡後の手続き一覧でも整理していますので、あわせて確認してみてください。

口座が凍結されると何ができなくなる?

実際に凍結されると、日常生活に直結する範囲で影響が出ます。あらかじめ把握しておくことで、慌てず対応できます。

引き出し・振込の停止

凍結後は、ATMでの引き出しはもちろん、窓口での払い戻しや振込、口座からの振替もできなくなるのが一般的です。キャッシュカードや通帳を持っていても、取引自体がストップします。

公共料金等の引き落としにも注意

見落とされがちなのが、電気・ガス・水道などの公共料金や、サブスクリプションサービス、クレジットカードの引き落とし口座に故人の口座を指定していた場合です。凍結されると引き落としができなくなり、支払いが滞ってしまう可能性があります。心当たりがある場合は、早めに支払い方法の変更手続きを進めておくと安心です。

凍結前に勝手に引き出してはいけない理由

「凍結される前に、必要な分だけ引き出しておこう」と考える方もいらっしゃいますが、これには法的なリスクが伴うとされています。

単純承認とみなされるリスク

相続放棄を検討する可能性がある場合、故人の預貯金を勝手に引き出して私的に使ってしまうと、「相続財産を処分した」とみなされ、単純承認(プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続する意思表示)をしたと扱われることがあるといわれています(民法921条1号)。この場合、後から借金などのマイナスの財産が見つかっても、原則として相続放棄ができなくなるおそれがあります。ただし、社会通念上相当な範囲の葬儀費用への充当などは「処分」にあたらないと判断された裁判例もあり、一律に相続放棄ができなくなるわけではありません。個別の該当性は弁護士にご確認ください。相続放棄には期限があるため、迷っている段階では口座からの引き出しは控え、詳しくは相続放棄の手続きと3ヶ月の期限もあわせてご確認いただき、個別の判断は弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

親族間トラブルの原因にも

相続放棄を考えていない場合でも、他の相続人に断りなくお金を引き出すと、「使い込みではないか」という疑念を招き、後の遺産分割協議がこじれる原因になることがあります。葬儀費用など緊急の支出であっても、可能な範囲で他の相続人に事前に共有しておくと、無用なトラブルを避けやすくなります。

葬儀費用が心配なときの「預貯金の仮払い制度」

凍結前に引き出せないとなると、「葬儀費用はどうすればいいのか」という不安が出てきます。そこで役立つのが、2019年7月1日に施行された民法909条の2に基づく「預貯金の仮払い制度」です。この制度により、遺産分割が終わる前でも、相続人が単独で一定額の払い戻しを受けられる場合があります(法務省「相続に関するルールが大きく変わります」より)。

計算式と150万円の上限

仮払いで単独払い戻しができる金額は、次の計算式で算出されるとされています。

相続開始時の預貯金額 × 1/3 × 払い戻しを行う相続人の法定相続分

ここで誤解されやすいのが上限額です。この制度による払い戻しは、「口座ごと」ではなく「同一の金融機関ごと」に150万円が上限とされています(全国銀行協会「亡くなった親の預貯金、すぐに引き出すことは可能ですか?」より)。同じ銀行に複数の口座があっても、合算して150万円までとなる点に注意が必要です。

預貯金の仮払い制度の計算式と上限

具体的なイメージとして、相続人が配偶者と子2人(法定相続分は配偶者1/2、子はそれぞれ1/4)で、亡くなった方が1つの銀行に600万円の預貯金を残していたケースを考えてみます。配偶者が単独で仮払いを請求できる金額は、600万円×1/3×1/2=100万円という計算になります。この金額は150万円の上限内におさまるため、原則としてそのまま請求できる範囲といえるでしょう。実際の金額や必要書類は金融機関ごとに異なる場合があるため、詳細は各金融機関に確認することをおすすめします。

なお、仮払いを受けた金額は「もらい過ぎ」になるわけではなく、後の遺産分割の際に、その相続人が取得する財産の一部としてあらかじめ受け取ったものとして扱われるとされています。葬儀費用の資金繰りについては、葬祭費・埋葬料の申請もあわせて検討すると、負担を抑えやすくなります。

家庭裁判所の保全処分との違い

仮払い制度で用意できる金額では葬儀費用や当面の生活費が足りない場合、家庭裁判所に申し立てて行う「保全処分(仮分割の仮処分)」という別の制度もあります。家事事件手続法200条3項では、2019年より要件が緩和され、債務の弁済や相続人の生活費のために必要があると認められる場合には、家庭裁判所が特定の預貯金債権の全部または一部を仮に取得させることができるとされています。こちらは遺産分割の調停または審判が家庭裁判所に係属していることが前提となる制度で、金融機関の窓口では完結しません。まとまった金額が必要な場合は早めに弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

凍結解除(相続手続き)の流れと必要書類

仮払いではなく、正式に口座の名義変更・解約を行う場合は、遺言書や遺産分割協議書の有無によって必要書類が変わってきます。一般的なパターンを整理すると、次のようになります。

パターン 主な必要書類の目安
遺言書がある場合 遺言書、検認済証明書(自筆証書遺言の場合)、被相続人の死亡がわかる戸籍、受遺者の本人確認書類など
遺産分割協議書がある場合 遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、被相続人の出生から死亡までの戸籍一式、相続人全員の戸籍など
遺言書・遺産分割協議書のどちらもない場合 相続人全員の同意書(金融機関所定の書式)、相続人全員の印鑑証明書、被相続人・相続人全員の戸籍一式など

凍結解除の必要書類3パターン

手続きにかかる期間の目安

必要書類がすべてそろってから、口座の解約・名義変更が完了するまでは、一般的に2週間〜1ヶ月程度かかるといわれています。戸籍の収集に時間がかかることも多いため、余裕をもって準備を進めることをおすすめします。手続きの詳細や必要書類は金融機関によって多少異なるため、事前に各行の窓口や公式サイトで確認しておくとスムーズです。

よくある質問

Q. 凍結後も通帳記帳はできますか?
A. 金融機関にもよりますが、記帳(残高照会)自体は凍結後も可能な場合があるとされています。ただし、取引はできないため、詳しくは各金融機関に確認することをおすすめします。

Q. 残高が少ない口座も同じ手続きが必要ですか?
A. 残高が少額な場合でも、原則として同様の相続手続きが必要になるとされています。ただし金融機関によっては簡易な手続きで対応してもらえるケースもあるようですので、窓口で相談してみるとよいでしょう。

Q. ネット銀行やネット証券の口座も同じように凍結されますか?
A. 銀行が死亡の事実を知った時点で取引が制限されるという基本的な仕組みは、ネット銀行やネット証券でも同様とされています。ただし、通帳がなくログイン情報の管理が中心になるため、家族がIDやパスワードを把握していないと、口座の存在自体に気づきにくいという特有の注意点があります。エンディングノートなどにネット銀行・証券の情報を残しておくと、遺族の負担を減らせるでしょう。

まとめ

銀行口座は死亡届の提出で自動的に凍結されるわけではなく、銀行が死亡の事実を知った時点で凍結されるのが原則です。凍結前に故人の預貯金を勝手に引き出すことは、相続放棄ができなくなるリスクや親族間トラブルにつながる可能性があるため避け、葬儀費用などまとまったお金が必要な場合は、預貯金の仮払い制度(同一金融機関ごと150万円が上限)の利用を検討するとよいでしょう。凍結解除の正式な手続きには、遺言書や遺産分割協議書の有無に応じた書類が必要になり、2週間〜1ヶ月程度の期間を見ておくと安心です。個別の状況によって必要な対応は異なりますので、迷ったときは金融機関の窓口や弁護士・司法書士に相談しながら進めていただければと思います。

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この記事を書いた人

両親や義理の家族を見送った経験から「やさしい終活ガイド」を運営しています。特定の業者に偏らず、葬儀・お墓・相続の手続きなどの費用相場や流れを、公的な情報や一次情報をもとに中立にお伝えします。(相続・税・法律の個別のご相談は専門家へおつなぎします)

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